2009年08月05日

開館5周年ですよ記念連載完結ですよ!

先日、休館作業中。7月31日。
当劇場が8月5日で開館5周年を迎えることに気がつきました。

「何かやらなきゃ!」

翌日から思いつきで連載を発進しました。
その翌日からもう後悔しました(笑)
気持ちだけで良い物語は書けないってね…

でも結局は気持ちだけで書き上げました。

最後まで書ききることができたのは
ここまで星屑劇場が(こんな形でも)存続できたのは
全てお客様のおかげです。

ありがとうございました!!



拍手ありがとうございますv
お蔭さまで本当にお蔭さまで最後まで到達できました…
Sさん、レスはまた改めて!
パチのみの方も大感謝です!



それではトラパス連載最終話。
もっとも推敲不足でもっとも長文ですが…ドンマイ(ぇ)
書いたことに意義があるっていうか、ね☆(異議あり!)
いろいろ裏話をはしょったり書き忘れたりしていますが(ぇえー)
まあ気にしないで(気にするわ!)
レッツ脱シリアス(……!?)




 * * * * *



「一歩を踏み出す勇気」





 夕べの夢は、夢だったら夢なのよ。

 よく考えたらダイタンなこと言っちゃったかもとか、よく考えたらあの時すぐ脇にルーミィとシロちゃんがいたよねとか、考えなくていーのよ! 夢なんだから!
 ……え、夢だよね? でしょ!? ね!?
 だれか夢だと言ってぇぇぇー!!
「パステルおねーしゃん? 気分でも悪いデシか?」
「うええっと!? いや、あー、うー、わ、悪くないよ、シロちゃん。だいじょぶ!」

 窓辺に頬杖をついて外を眺めていたわたし。
 突然ガバッと顔をふせて木枠をダンダンダダンと叩きだしたので、心配をかけてしまったみたい(不審がられてもおかしくないのに!)
 慌てて振り返ると、ベッドの上にちょこんとシロちゃんが座っていた。

 ……あれ?

「シロちゃん、ルーミィは?」
 ふたりが一緒じゃないなんて珍しい。
 聞いてみると、シロちゃんは少し困った様子で答えてくれた。

「ルーミィしゃんは、トラップあんちゃんとお話してるデシ」
「ふっ、…ふ~~~ん……」
「あんちゃん、元気が無いんデシ」
「……そう?」
 何を言い出すのシロちゃん。あれだけ元気に遊びまわってるじゃない。
 そう言えなかったのは、シロちゃんの瞳があまりにも真剣だったから。

「パステルおねーしゃんも、元気ないデシ」

 そんなことないよと言えなかったのは、シロちゃんの瞳があまりにも悲しげだったから。



「おねーしゃん。あんちゃんは、ボクに言ったデシ」




 シルバーリーブに向けて、シロちゃんがトラップを背に乗せて飛び立つ前。
 彼らは、こんな会話をしたらしい。

「なー、シロ」
「はいデシ」
「男同士の秘密、守れるか?」
「合点承知デシ! ボク、男の子デシ」
「よーっし! じゃあこれは秘密なんだが……おれな、実は帰りたくねーんだわ」
「えっ…あ、あんちゃん!?」
「覚えとけシロ、カッコつけると後で気まずいことがあるんだぜ」
「は…はいデシ…?」
「でもなあ――帰りてえんだ、すっげー」
「…………?? 気まずくて帰りたくなくても、帰りたいんデシか?」
「おう」

 ――すっげー、会いてえの。あいつに。





「そう言って、ニコッと笑ったデシ」

 シロちゃんは潤みながら輝く透き通った瞳で、必死に何かを訴える。
 なに を ?

「トラップあんちゃんは帰ってきてから、パステルおねーしゃんと、ちゃんと会ってないデシ」
「……それは」
「おねーしゃん。あんちゃんは、パステルおねーしゃんに会いたかったと思うデシ。
 パステルおねーしゃんの所に、帰りたくて、でも帰りたくなかったんだと思うデシ!
 ……ボクにはよくわかんないデシけど」



 不思議と。

 シロちゃんの言葉は、本当に本当のことのように聞こえた。



「……ねえ、シロちゃん」
「はいデシ」
「いいの? 男同士の秘密をわたしに話しちゃって」
「…………いいんデシ」
 ずどーーーんと落ちこんだ様子のシロちゃんの白い毛並みが、気のせいか青みがかって見える。
 それでもシロちゃんは健気に言ってくれた。

「いいんデシ。話さなかったら、わかってもらえないデシから」

 だけど本当はいけないと思うデシ……と、うつむくシロちゃん。
 可愛いのに、すごい。すごいな。

 何から何まで、この小さなホワイトドラゴンの言う通り!



 話さなければ

 伝わらない



 トラップが帰ってきてから、彼もわたしに近寄らなかったけど。
 わたしも自分から近づこうとはしなかった。
 無意識に避けていたのかもしれない。
 話すこと。わかること。変わるかもしれないこと。



「シロちゃん! ……お願いがあるの」
 ごくりとツバを飲んで言うと、シロちゃんはハッとして顔を上げた。

 どうか願いを叶えて。

「一緒にきてくれる?」
「……どこへデシ?」

 一歩を踏み出す勇気をちょうだい。

「トラップの所へ!」

 聖なるホワイトドラゴンはわたしの肩にぴょんと乗り、嬉しそうに目をきらめかせた。

「合点承知デシ!!」



 わたしは小さくて大きな勇気を乗せて、扉を開けて飛び出し――







「うぶっ!!」
「っとと…っぶねー! って、パステルかよ?」
「へっ? あ、トラップ!?」



 飛び出したほぼ直後。
 扉の向こうから飛び出してきた何かに顔をボスンと打った。
 と思ったら目的の人物。

 ……なんなの、このタイミング!

 見上げるとトラップは、「なんなんだ、このタイミングは」って顔でルーミィを肩車していた。
 彼女はぽよんとした表情で「あー、ぱぁーるぅとしおちゃんだー!」と喜んでいる。
 トラップがルーミィ肩車なんて。めっずらしー。

「……なるほどな。おめーはシロにケツたたいてもらったわけか」
 ぼそっとつぶやいたトラップの言葉を聞き取ったものの意味がわからなかった。
「は?」
「なんでもねえ! それよかパステル、もしかして、おれに用事か?」
「えっ! あ、まあ…」
「奇遇だな。おれもだ」
「えっ! トラップもトラップに用事?」
「…………んなわけあるか!」
「いったぁー!」
 トラップに手刀をくらわされる。
 えーん、ちょっと勘違いしただけなのにー!
 こっちは突然トラップを目の前にして、軽くパニックなんだからね!
 まったく、何をどう話していいのやら。
 ルーミィとシロちゃんが心配そうに、でもおとなしく、わたしを見てる。
「……んもぉー、乱暴なんだから」
「おめぇーがボケてっからだよ」
「何よ! わたしがボケたとしたらトラップに叩かれたせいなんだからね!」
「おーそりゃ大変だ。責任とって死ぬまで介護してやるから安心しろ!」
「トラップの介護じゃ安心できない!」
「んだとぉ!?」
「だってトラップは危なくなったら自分だけどっか行っちゃうじゃない!!」

 あれ? 話の流れが、いつの間にか。
 勢いのまま、止まらない。

「いつもは逃げ足発揮してさ、肝心な時は危ない所に行っちゃってさ。
 わたしは、いつもおいてきぼりで!
 冗談じゃないわよ!
 トラップはねえ、もう信じられないの!
 そばにいてって思うけど、思ったって、どーせあなたは離れちゃうんでしょ!」

 ぽかん、とした顔のトラップを見上げて、思いきり息を吸う。





「だから! ……わたしが、ずっとあなたの隣にいる!! もう離れない!!」





 ――何、言ってるの、わたし。
 やっぱりボケてる?

 こんなことこんなふうに言うつもり、ついさっきまでまったく無かった気がするんだけど。

 でも。
 伝えたかったことでは、ある。

 ……でもだからこそ、こんなふうに喧嘩腰で告げるべきじゃなかったんじゃないかしら。

 トラップの肩の上のルーミィが、目をまんまるくしている。



 わたしは彼女に手を伸ばした。



「――パステ…!?」
「違う! ルーミィを抱っこしてるの、これは!!」

 例えトラップに抱きついている形に見えようとも。

「抱っこかあ? わーい!」
「…………じゃあ、おれはシロだ。いいな?」
「すっ、好きにすれば?」
「ぶわぁーか。おりゃシロに言ってんの」
「ぼっ、ボクはいいデシけど…」

 わたしの頭の後ろをぐるりとめぐって。トラップがシロちゃんを抱きしめる。
 わたしごと、抱きしめる。





 何やってんだろ、わたしたち。



 ばかみたいで。

 あったかい。



 ――ああ、本当の本当に、ここに、いる。この人が。





「お帰りなさい、トラップ」





 これが最初かもしれない。
 わたしと彼の、元通りで、どこか新しい時間の。

 これが最初かもしれないから。

 ずっとずっと伝えたかった言葉を、大切にそそいだ。



 ただいまと言う代わりに、彼は抱きしめる手にぎゅうと力をこめた。

 シロちゃんが遠慮がちに「痛いデシ…」と笑った。






「微妙な距離のふたりに5題」より

(C)確かに恋だった
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at 23:59│