あ、あれっ?;;元気は元気なんですけどね^^;

2009年07月27日

「さようならも奏でられずに」

ここは異世界じゃない世界。



当たり前にある日常を。

持て余すのが、僕の日常。








放課後の教室は明るくざわめく。

解放のリズム。



「おーいー。モリくん、起きねんだけど。ヤッチャウ?」

「え、何。目覚めのチューとか?」

「するか! 気色わりぃ!」

「あたしヤッチャウー。顔に落書き」

「オレもー。あ、油性ペン貸して」

「うわオニがいる」

「あーあ。ウチ今日は早く部室行かなきゃいけないんだけどなー」

「こっちは塾だぜー」

「とか言いながらソイツの袖めくってどうすんの、お前ら」

「うふふふ」

「ぬふふふ」

「……またくだらない事を…」

「ん、チョーさん? そんなふうに言うなよ、メガネに落書きしちゃうぞっ」

「やっ、やめんか! ちょ、…やめてー!!」

「ねえねえ、誰かゴム貸して、できればリボンー」

「あ、私の……で、よければ」

「わーい、よいよい! 最高!」

「ついでに、ほら、ヤジマちゃんも。イタズラしてやんない?」

「へ? ああああの、でも…」

「ん、やりたくないなら無理しなくていーよー」

「でも遠慮はすんな? しなくて良し。なぜなら、イタズラはヤツへの愛だから!」

「そう、だからボクは油性ペンで彼への愛を刻みつけているのさ、消えないようにネ!」

「そそそ、そうなんだあ…!」

「信じるなソコー」



途絶えない、はずむ音。

授業中はキンチョーしてたり、だらけてたり。てんでばらばらの皆。だが、この時間は別。

部活や何かで学校の内外に散らばる前の、この短い時間。ほぐれた顔で何気ない何でもない、やりとりをする。

なんだかんだで、仲のいいクラスだ。



放課後。

充実からは少し遠くて。

だけど退屈からは抜け出した。

解放。

言いかえれば、安息。

ひと休み。



この活気づいたゆるいテンポは、どうでもいいようで、きっと大事な時間なんだろう。



……ふと苦笑する。

ああ、まただ。



同じ教室の中にいながら、まるで自分だけ違う空気を吸ってるように感じる。



僕の存在も皆の存在も同じなのに。今ここにいるという点で。



だけど僕は、僕がどこにもいない気がするんだ。

時々。すごく。





あの日から僕は、音楽を奏でられない。





「コトナミくーん! コトナミくんも愛してあげてよ、こ・い・つ」

振り向くより早くクラスの注目が僕に集まる。

呼び止めた女の子は指先を真下に向けて、さっきから話題の中心にいる男子を差していた。

黒板を横切って教室を出ようとしていた僕は、立ち止まって肩をすくめて見せる。



「悪いけど僕、彼女一筋だから」



どっ、と沸きあがる声。そんなに面白いか。面白いんだろうな。

「ぎゃっはっは、モリの奴フラれてやんのー!」

「いよっ、コトナミくん、男前! 日本一!」

「お熱いねえ~」

「やっべ、俺惚れたかもコトナミに!」

「あたしも! いまシツレンしたけど~!」

「っていうかオマエ、彼女いたんだ!?」



――うん、いるよ。

皆の誰ひとり、彼女を知らなくても。



真面目でおとなしくて、笑うと可愛くて、だけど笑ってなくても可愛くて。



僕と泣いて僕を捨てて僕に笑んで遠い世界へ行った、幻みたいな彼女がいるよ。





『――琴南くん…』





風に消えそうな細い声が、恥ずかしげに僕の名を呼んでいた。

いつも。はにかんで。

あんなに優しい愛しい歌は、この世界に他にない。



だから、あの歌はもう二度と聞けない。



この世界では。





「え、何々? もしかしてこれから愛しの彼女と、おデェト?」

出口に向かって歩き出していた僕に、再び声がかかる。

もう立ち止まらなかった。



「――うん。会ってくるよ、久しぶりに」





会いに行くよ、君に。



ここに二度と戻れなくても。



ごめんね、もしかしたら僕の願いは、君の望みの破壊なのかもしれない。

僕をここに残すため、君は手を離したはずだから。

それなら僕を罵ってくれて構わない。そして、呼んで、僕の名を。だけど、笑って、最後には。





君がいなくても呼吸していられるけど

君の歌がなきゃ心を鳴らせない

怖がりで幼い僕を許して。



君をなくして、慟哭すらも凍りついたままなんだ。






「じゃーコトナミー。また明日なーっ」





「………………」








僕は黙って、日常が満ちる世界の扉を、後ろ手で閉ざした。

異世界の歌を求めて。








階段を降りながら何となく口笛を吹こうとしたけど、弱々しく風が吹いただけだった。










 * * * * *



よくわからないけど暗いテイストで終わる話ですみません。

コトナミくんは、わたしが長年考えてる物語の脇役ですが…
本編ではいつもハーモニカやピアニカ吹いて人と会話する優雅な変人なのですが…
そう、このあと、ある人物と出会って音楽を奏でられるようになるんですが…

ずいぶん暗い人だったんだなぁ(←お前のせいでな)このままだったら絶対、異世界に行っちゃってましたね。

「異世界」の解釈は皆様にお任せいたします。



うーん、暗い人よりもモリくんとヤジマちゃんを書きたかったな★

クラスの愛されいじられキャラ・モリくん&愛され守られキャラ・ヤジマちゃん。
本人同士以外は両想いだと知っている(笑)ピュアカップルです。
クラス全員で二人を見守ってるんだ!

このあと、皆のイタズラでモリくんとヤジマちゃんは二人っきりにされるんだ!
頑張れモリくん!(何をだ)

ちなみに本編には登場予定のないカップルです(えー!?)



ちなみに本編自体、書き上げる予定はありません(えー!?)

at 22:58│
あ、あれっ?;;元気は元気なんですけどね^^;