2007年04月30日

FQ・SS

変化


 あいも変わんねえドタバタクエスト。
 いつもと変わらず喧しいおれら。
 だけど少しずつ、変化している。


「ぱぁーるぅー、はりゃへったぁー」
「えっ!?」
 呼びかけられたパステルは目を丸くして、ミミウサギの肉に串を通す手を止めた。
 そりゃそーだ。
「腹へった」っつったんだぞ、ルーミィが。
 あの、ルーミィが。
 お得意の「おなかぺっこぺこだおう」じゃなくて、「腹へった」って!
 おいおい、いってぇ、どーしたってんだ??
「ルーミィ…どうしたの?」
 おそるおそる、という感じで、おれと同じ疑問をパステルは口にする。
 そばの木の上で見張りを兼ねて休憩中のおれも、意識をそっちへ向けた。
「ルーミィ、はりゃへったんだおう」
「うん、それはわかったんだけど。その、でも、いつもと言い方が違うじゃない? だから、なんでかなって…」
「まねっこしたんだお!」
「まねっこ!? 誰の!?」
「とりゃーっぷぅの!」
 ずりっ。
 バランスを崩して枝から落ちかけるが、そこはおれの素晴らしき身体能力で何とかカバーする。ちっと危なかったけどよ。
 …まさか、ここでおれの名が(正確には名前じゃねえけど)出てくるとはなぁ。
 痛え。
 おれがここにいることを知ってやがるパステルの視線が、痛え。下から針でチクチク刺されてるみてえだ。
『まったくトラップったらルーミィにろくでもないことばっか教えて……』
 っつうような、あいつの心の声が聞こえてくる。
 ちくしょ。久々に、あいつからこんな冷てぇ視線を浴びせられたぜ。
 おれは寝たふり、気づかねえふり。
「いい? ルーミィ。口の悪いトラップの真似なんかしちゃダメよ?」
 パステルは真剣な声色でルーミィに語りかける。
 ちらっと目をやると、ルーミィの両肩に手を置いて、真面目に説得してる様子が見えた。
 シツレーな奴だぜ。
 けどまぁ、おれだって、おれと同じしゃべり方するルーミィなんざ見たかねえ。
 おとなしく見下ろしていると、ルーミィの髪が揺れた。首をかしげたらしい。
「とりゃーっぷぅのまね、しないほうがいいんかぁ?」
「そうよ。ルーミィは女の子なんだし」
「れもぉ…ぱぁーるぅにお願いすぅときは、とりゃーっぷぅのまねっこすぅといいって」
「は?」
 あん?
 思わず眉をひそめちまう。
 パステルにお願いするなら、おれの真似? なんでだ?
 まさか――
「ね、ルーミィ。それ、誰が言ってたの?」
 おれも知りてぇことをパステルが聞いてくれる。
 ルーミィはあっさり答えた。
「きっとぉんだお! あんね、ぱぁーるぅは、とりゃーっぷぅに優しくなったんらって」
「……え?」
「ちゅきあうよーになって変わったんらって。
 だかりゃ、お願いすぅ時はルーミィも、とりゃーっぷぅみちゃいに言うといいれすお、って」



 つ き あ う。



 ば れ て る。



 少しずつ、変化しているおれら。
 先日おれは努力の甲斐あって(そりゃもう相当な努力の甲斐あって)、ついに。
 パステルとの関係を進展させた。
 いわゆる、恋人同士ってやつだ。
 夢じゃねえぞ。たぶん。

 だがパーティの連中には話してねえ。いろいろ面倒だしな。
 当然、奴らの前でおれたち二人がそれっぽい素振りを見せたこたぁねえ…はずだったが。
 キットンめ………見抜いていたか。
 そう、パステルはほんのちっと、おれに優しくなった。つーか、笑顔を見せてくれることが増えた。
 夢じゃねえんだよな。たぶん。



 変わっていく、おれら。



「キ、キ、キ、キ、キットンったらぁぁぁー!!」
 その後、パステルはとりあえずルーミィに菓子を食わせ、とりあえずおれの口まねを禁止した。
 そしてキットンを殴り飛ばしに走りさっていった。
 それを見送り、木から飛び下りる。
「よ、ルーミィ」
「ほわ? とひゃーっふぅ」
 口の中いっぱいにビスケットをほお張っておれを見つめる。
「うまいか?」
「うひゃいおー」
「そりゃよかった」
「とひゃーっぷぅ、何してるんらぁ?」
 脇にしゃがみこんでゴソゴソやってるおれの腕に手をかけ、ルーミィが顔を覗きこませてくる。
 おれの手には、調理途中のミミウサギの肉と、それに突き刺す串があった。
 何してるかって。
「パステルに、優しくしてんだよ」
 ま。暇だし、な。





* * * * *


ルーミィが変化した、と見せかけて
変わったのはトラップとパステルだったのでした、というお話。
トラップはミミウサギの調理しながら
「付き合ってんのキットンにばれちまったけど夢じゃねえんだよなおれら付き合ってんだなウヘヘヘヘ」
と喜び噛み締めてると思います。
嫌だ、そんなトラップ。

久々に文章を書き上げられました。
ホッとしました~。
(出来はともかく。)


at 09:25│